Case T02
脳動脈解離の撮像のポイント,教えます!
これらの撮像の問題点は?対策は?
解説(1):頭部MRA撮像範囲
脳動脈解離の発生部位は,椎骨動脈に最も多く,次に前大脳動脈に多い。
そのため,頭部MRAの撮像範囲は,近位はV4(環椎下縁),遠位はA3-4(脳梁を十分に含む)を含むことが求められる。
また,後頸部痛を伴う症例には頸部MRA撮像も必要となる。
最近の装置であれば,この範囲を6~8分程度の時間で撮像可能であるためルーチン的に撮像することが望ましい。
【脳動脈解離の発生部位別頻度】[参考文献1)]
・椎骨動脈 63%
・前大脳動脈 8%
・後下小脳動脈 6%
・脳底動脈 5%
・その他 18%
最近の装置であれば,この範囲を6~8分程度の時間で撮像可能であるためルーチン的に撮像することが望ましい。
【脳動脈解離の発生部位別頻度】[参考文献1)]
・椎骨動脈 63%
・前大脳動脈 8%
・後下小脳動脈 6%
・脳底動脈 5%
・その他 18%
MRA-MIP像
左椎骨動脈解離(V4;→)
両前大脳動脈解離(A2-3;○の部分)
解説(2):MRAフローアーチファクトと脳動脈解離の鑑別
MRAで重要となる所見は,double lumenおよびintimal flapであるが,フローアーチファクトがこれらに類似した所見を呈し,鑑別を要することがある。
原因は,血管の屈曲・分岐・狭窄・動脈瘤などにより生じた乱流・渦流が血液の位相分散効果を助長させ,部分的な信号欠損を引き起こすためである。
鑑別には造影MRIによる評価が施行されてることが多いが,非造影の方法としてTEを最小としたMRA撮像が有用となるケースもある。
鑑別には造影MRIによる評価が施行されてることが多いが,非造影の方法としてTEを最小としたMRA撮像が有用となるケースもある。
解説(3):T1強調像フローアーチファクトと脳動脈解離の鑑別
T1強調像で壁内血腫を証明することは脳動脈解離を確診することになるが,紡錘状拡張を伴う脳動脈解離では,フローアーチファクトが急性期の壁内血腫と同様の所見を示し,鑑別を要することがある。
そこで,T1強調像の撮像に血流信号抑制技術の併用やecho train lengthが多く・低いリフォーカスパルスを使用することでflow void効果が強くなるVRFA-FSE法の撮像が有用となるケースもある。
【出題・解説】
藤本 勝明(済生会富山病院放射線技術科),蔭山 昌成(済生会富山病院放射線科)
藤本 勝明(済生会富山病院放射線技術科),蔭山 昌成(済生会富山病院放射線科)
[Q1-A] MRA-MIP像
[Q1-B] 左:MRA-MIP像,右:MRA-元画像
[Q1-C] 左:T1強調像,右:MRA-MIP画像
解答/問題点と対策
[Q1-A] ○ 正しい[Q1-B] ○ 正しい
[Q1-C] ○ 正しい
[A1-A] 左:MRA-MIP像 ⇒ 右:MRA-MIP像(撮像範囲拡大)
[A1-B] 左:MRA-MIP像 ⇒ 右:MRA-MIP像(Short TE)
●参考●[A1-B] MRA-MIP像の元画像
[A1-C] 左:T1強調像 ⇒ 右:T1強調像(血液信号抑制技術併用)
●参考●[A1-C] MRA-MIP像