Case T03

追加MRA撮像のポイント,教えます!

Q. 診断に役立つ追加MRA撮像は?


頭部MRA



解 答

⑤ ①~④すべて正解


● Doctor's Comment ●

【画像所見と診断】
両M1遠位~M2は屈曲しており描出不良(R>L)が見られる(図1-A;○の部分)が,末梢側の両M3・4は左右の信号差もなく良好に描出されている(図1-A)。

図1-A MRA



撮像は,5スラブのマルチスラブ撮像であり,スラブ間は25%オーバラップしている。 描出不良の両M1遠位~M2は,3slabの末梢側の動脈であり描出が良好な両M3・4とは別のスラブ(2slab)である(図1-B)。
そのため両M1遠位~M2の描出不良は飽和効果**によると考えられるが,狭窄などの除外診断が必要である。

図1-B MRA



描出不良の部分に範囲を絞り,FAを低く設定したシングルスラブMRA撮像を追加したところ,描出不良は改善し,右M2分岐部には動脈瘤を認めた(図1-C)。

図1-C low FA MRA
(ルーチンMRAのFA 18°から13°に変更したシングルスラブ撮像)




*マルチスラブ撮像
広範囲のMRA撮像を行う場合,飽和効果により末梢部の血管描出が不良となるため,撮像範囲を分割し,1スラブ当たりの範囲を小さくすることで飽和効果の影響を減少させる方法である。 通常,静脈信号を抑制するために各スラブの頭側にサチュレーションパルスを印加する。 そのため,サチュレーションパルスの印加位置によってはスラブ内に頭側から流入する動脈の信号が抑制されることがある。

**飽和効果
飽和効果は繰り返されるRFパルスにより,縦磁化が次第に減少することをいう。 これは,結果として信号の低下(そしてSNRの減少)につながる1)

●Technical Comment● 原因と改善策

MRAでは様々なアーチファクトが出現する。その中のひとつに飽和効果による信号低下が挙げられる。
これは,撮像条件の最適化を行っても症例により血流速度・血管走行が様々であるため時々遭遇する。
特に海綿静脈同部IC~M1は,同一スラブ内を撮像断面と平行に走行するために強い屈曲が存在すると飽和効果が助長され,信号低下となりやすい。
さらに本症例では,巨大な脳動脈瘤の存在により瘤内の乱流・渦流が位相分散による信号低下や動脈瘤の一部がスラブのオーバラップ部分に含まれているため(図1-D),4slabの静脈信号を抑制するサチュレーションパルスが動脈瘤の信号抑制を引き起こした可能性も考えられる。



図1-D MRA(ルーチンMRAとLow FA MRAの合成)




飽和効果の改善策として下記の方法が挙げられるが、追加撮像のため描出不良部のみの再撮像を前提に考えると①は除外され,②TRの延長は撮像時間の更なる延長を伴う。③可変FAの設定は大きくしても動脈の末梢側がスラブに平行な場合や尾側に屈曲する場合では効果も少ないと考えられる。

【飽和効果の改善策】
① マルチスラブ数を増やす
② TRを延長する
③ 可変FAの設定を大きくする
④ FAを低くする

Recommend:おすすめ!

撮像時間の延長や血管の走行に依存しない④FAを低くしたシングルスラブMRA撮像が有効である。


【出題・解説】
藤本 勝明(済生会富山病院 放射線技術科),蔭山 昌成(済生会富山病院 放射線科)