Case T04
40代後半,女性。
子宮頸癌化学放射線治療中。
RALS(小線源治療)前の治療効果判定のためMRIが依頼
追加撮像は?
Chemical shift image(in-phase,opposed-phase)
● Doctor's Comment ●
【MRI所見】
子宮頸部に46mmの腫瘤が認められ,子宮頸癌と思われる。子宮内に限局しているように見える。 左腸骨に認められる腫瘤(→)はopposed-phaseにて信号が低下しており,過形成骨髄と思われる。
子宮頸部に46mmの腫瘤が認められ,子宮頸癌と思われる。子宮内に限局しているように見える。 左腸骨に認められる腫瘤(→)はopposed-phaseにて信号が低下しており,過形成骨髄と思われる。
図1-A T2強調像
図1-B T1強調像
図1-C 拡散強調像
図1-D in-phase
図1-E opposed-phase
● Technical Comment ●
しばしば拡散強調像(DWI)において,過形成骨髄(赤色髄)は悪性腫瘍と同様に高信号として描出される。
これは特に担癌患者における転移性骨腫瘍との鑑別に問題となる。その両者の鑑別に有用な撮像がchemical shift imageである。
過形成骨髄はピクセル内に水と脂肪が含有されているので,opposed-phaseにおいて信号が相殺されて低信号として描出される。
一方,ほとんどの転移性骨腫瘍は脂肪を含有していないので,opposed-phaseで信号が低下することはない。
すなわち,骨に腫瘤を認めた際,chemical shift imageを追加撮像することは,転移性骨腫瘍と過形成骨髄との鑑別に有用である1)。
下の症例は乳癌の転移検索目的でWhole Body MRIを施行した画像である。 DWIBS(diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression)にて,乳癌(赤丸で囲った部分)と胸膜転移(緑矢印)が認められる。 また,Sag reformatでは椎体に高信号が認められ(黄矢印),転移性骨腫瘍を示唆する所見である。 しかし,それらの椎体はopposed-phaseにおいてin-phaseと比べて著名な低信号を示していることから,転移性骨腫瘍ではなく過形成骨髄と診断することができる。
下の症例は乳癌の転移検索目的でWhole Body MRIを施行した画像である。 DWIBS(diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression)にて,乳癌(赤丸で囲った部分)と胸膜転移(緑矢印)が認められる。 また,Sag reformatでは椎体に高信号が認められ(黄矢印),転移性骨腫瘍を示唆する所見である。 しかし,それらの椎体はopposed-phaseにおいてin-phaseと比べて著名な低信号を示していることから,転移性骨腫瘍ではなく過形成骨髄と診断することができる。
図2-A DWIBS
図2-B DWIBS
図2-C in-phase
図2-D opposed-phase
Chemical shift imageは,1984年 W.T.Dixonにより水と脂肪の位相差を利用して脂肪の信号を分離する手法として提唱された技術である。
脂肪のプロトンの周りには多数の電子が回っており,これが外部磁場を相殺するように働くため,感じる磁場が小さくなり,歳差運動が水のプロトンよりも遅くなる。
脂肪のプロトンの周りには多数の電子が回っており,これが外部磁場を相殺するように働くため,感じる磁場が小さくなり,歳差運動が水のプロトンよりも遅くなる。
図3
図3のようにopposed-phaseでは水と脂肪の信号が相殺されるため,ピクセル内に水と脂肪が混在している場合には信号が低下する。
このことからchemical shift imageは微量な脂肪の検出に優れている。
通常の脂肪抑制画像では微量な脂肪が含まれるピクセルの信号低下はわずかであるのに対し,chemical shift imageではその信号低下が明瞭であるという特徴を持つ。
【出題・解説】
中 孝文(川崎幸病院 放射線科)
長谷 聡一郎(川崎幸病院 川崎大動脈センター 血管内治療科)
中 孝文(川崎幸病院 放射線科)
長谷 聡一郎(川崎幸病院 川崎大動脈センター 血管内治療科)