Case T05

70代,男性。よく脈が飛ぶので心配になりER受診。
現病歴:字が書けない。既往歴:甲状腺癌,胆嚢癌,期外収縮(PVC)

追加撮像は?

頸部MRA,T1強調像


● Doctor's Comment ● 画像所見と診断

【CT(図1,上段)】 白質慢性虚血性変化を認める。
【MRI(図1,中・下段)】 左大脳半球白質に多発脳梗塞巣を認める。

図1 <上段>CT,<中段>拡散強調像,<下段>T2強調像


【頸部MRI】
左内頸動脈分岐部に不安定プラークに伴う高度狭窄を認める(図2,4,5〜7;→)。

図2 3D TOF MRA

図3 3D FSE T1強調像
(右頸動脈)

図4 3D FSE T1強調像
(左頸動脈)

図5 3D FSE T1強調像
(Cor reformat)

図6 2D FSE T1強調像

図7 2D FSE T2強調像

● Technical Comment ●

 頸動脈の粥状動脈硬化性プラークは,高率に脳梗塞や一過性脳虚血発作などの脳血管障害を引き起こす重大なリスクファクターのひとつとして注目されている。 特に不安定プラークと呼ばれる脳梗塞を引き起こしやすい危険性の高いプラークを見逃さないことが重要である。 頸動脈プラークの性状診断には組織コントラストが良好なMRIが有用であり,T1強調像で胸鎖乳突筋との信号強度比を測定し,その値が大きいものが不安定プラークであると報告されている1)~4)
 ただし,撮像装置の違いや撮像条件・撮像法の違いによりT1強調像での信号強度比の値が異なるため,撮像条件を揃えたconventional SE法,もしくはFSE法で撮像することでほぼ同じ信号強度比を得ることができると報告されている5)


【両側内頸動脈不安定プラーク症例(脂肪抑制併用T1強調像)】

図8 治療前


図9 治療後




【当院における撮像条件】
(使用装置:GE社製SIGNA Architect)

3D CUBE T1強調像
Scan Plane:Sag
FOV:20×18(phase FOV0.9)cm
Frequency direction:S-I
Slice thickness/gap:2.0/0mm
TR/TE:5475/15ms
Matrix:200×200
NEX:2
ARC factor:2.0
Scan Time:8min43sec



2D FSE T1強調像
Scan Plane:Ax
FOV:18×18cm
Frequency direction:A-P
Slice thickness/gap:3.0/0mm
TR/TE:554/9.4ms
Matrix:256×224
NEX:3
ARC factor:2.0
Scan Time:4min31sec



3D CUBE T1強調像
短時間撮像を要する場合には,
3D GREによる20秒前後の撮像で対応する。


【出題・解説】
中 孝文(川崎幸病院 放射線科)
長谷 聡一郎(川崎幸病院 川崎大動脈センター 血管内治療科)