症例11
疾患名・解説
Step3
その後解説を見て、再度画像診断を検討して下さい
診断:シェーグレン症候群関連間質性肺炎
(Usual Interstitial
Pneumonia(UIP))
画像所見の解説
胸部X線写真
右上肺野全体に網状・粒状影、浸潤影がみられ、上葉の容積減少も疑われる。下肺野陰影は乏しい。
CT像
両側上葉優位に浸潤影、すりガラス影がみられ、一部は粒状ないし小結節影も散見される。肺尖部を主体に胸膜癒着あるいは肥厚様変化もみられる。
両下葉、背側・胸膜下優位に軽度の網状影、浸潤影及びすりガラス影を認め、陰影内部では細気管支の牽引性拡張も疑われる。明らかな蜂巣肺は認めない。典型的な特発性肺線維症の画像所見と異なり、上肺で陰影が目立つ点や、すりガラス影や粒状影を伴っている点が特徴的である。
本症の解説
病理組織像
胸膜下を主体とした密な線維化と顕微鏡的蜂巣肺を認める。正常肺を介在し、線維化との移行は急峻である。以上よりUIPパターンに矛盾しない。 一方で、リンパ球、形質細胞浸潤がやや目立ち、リンパ球集簇像も認められることから、膠原病等の背景疾患の存在が疑われる。
全般
・シェーグレン症候群における肺病変の合併は9~75%と比較的高頻度である。症状に乏しい未診断例が多く、本症例のようにしばしば肺病変、特に間質性肺炎が診断契機となり得る。
・間質性肺炎は慢性経過のNonspecific Interstitial Pneumonia(NSIP)、次にLymphocytic Interstitial Pneumonia(UIP)が多く、
病理パターンは混在例が多い。以前はLIPパターンが強調されることが多かったが、頻度は稀である。(1)-(3)
・画像・病理所見とも、特発性間質性肺炎と鑑別が難しい例も少なくない。
・画像では上肺に目立つ陰影、嚢胞、リンパ節腫脹、粒状影・気管支壁肥厚などの所見が、病理ではリンパ濾胞や形質細胞浸潤、細気管支病変の合併、時に肉芽腫などの所見が、鑑別に有用である。(4)
参考文献:文献へのリンク付
1.Ito I, et al. Am J Respir Crit Care Med.2005;171:632-638
2.Parambil JG, et al. Chest.2006;130:1489-1495
3.Enomoto Y, et al. PLoS One.2013;8:e73774
4.Enomoto Y, et al. Respir Investig.2014;52:227-235
2016-04-01
本症例は「症例画像データベース」に登録されました。