症例03
疾患名・解説
Step2
診断名を見て、再度画像診断を検討してください
Step3
CT所見、用語(解剖)解説と病変所見のあるキー画像
キー画像の右側の“>”をクリックすると画像上の重要所見に矢印マークが現れ、さらに“>”をクリックすると所見のコメントが現れます。Thin-slice画像や白黒反転での読影にも挑戦してください。
画像所見の解説
CT所見
気管支、肺野
1.両側下葉の気管支に円筒状の気管支拡張と壁肥厚(トラムライン)が見られる。とくに左下葉で壁肥厚は高度である。小葉中心性の粒状陰影や分枝状の結節影(気管支内粘液栓:mucus
plug)を伴い、肺野濃度の低下(エアートラッピング)も見られる。また気管支拡張の近傍では斑状の軽度の浸潤像もあり。気管支拡張、慢性気管支炎に軽度の気管支肺炎の合併と考えられる。
2.左葉舌区では部分的な末梢性無気肺が見られる。
3.左上葉には、Φ4mm大のすりガラス状結節が見られる。炎症性病変や高分化型腺癌の可能性が考えられる(その後のfollow-up CTにて病変のサイズ、性状に変化なし)。
用語解説【トラムライン(tram line)】
気管支拡張症の所見で、気管支の壁肥厚と内腔の拡張によって、通常は見えにくい気管支壁が目立つようになる。気管支の長軸方向の断面では、“市街電車の線路”のように壁が平行に走る2本の線として見える。
キー画像1 円筒状気管支拡張
キー画像2
キー画像3
キー画像3(追加)
白黒反転画像で左下葉気管支の円筒状拡張・壁肥厚・粘液栓の所見をトレースしよう。
キー画像4 肺野:結節状すりガラス影
左上葉には、Φ4mm大のすりガラス状の結節病変あり。炎症性変化、高分化腺癌などの可能性が考えられ、follow-up中である。
キー画像4(追加)
白黒反転画像で検出容易
背部痛の原因のCT所見
胸椎(Th12)圧迫骨折:横断像で胸椎(Th12)椎体の前縁突出、前縁骨皮質の亀裂、骨濃度の上昇(圧迫による骨密度上昇)が見られる。5mmスライスではあるがMPR矢状断と冠状断で椎体の圧排扁平化と硬化像を確認できる。
そのほかのCT所見
1.乳腺腫瘍:左乳腺に、Φ1cm大の境界明瞭な充実性結節病変が見られる(細胞診では陰性、その後のfollow-upで変化なし。線維腺腫を疑われている)。
2.食道裂孔ヘルニア
キー画像5 Th12 圧迫骨折
Th12椎体は圧排扁平化、濃度上昇が見られる。前縁の骨皮質に骨折線の一端が見られる。周囲には浮腫はなく亜急性期(1ヶ月前のエピソード)の圧迫骨折である。 横断像で気づくのは難しいが、シネモードで観察していくと椎体の前縁が前方に突出しているのと骨の硬化像と前縁の亀裂を見つけることができる。
キー画像5(追加) Th12 圧迫骨折
5mm横断画像をMPRリフォーマットして矢状断と冠状断を作ると、圧迫骨折を認識できる。
キー画像6 乳腺腫瘍
左乳腺に1cm大の球形の充実性結節あり。 その後に行った細胞診では悪性所見なく、経過観察となった(線維腺腫の疑い)。
キー画像7 食道裂孔ヘルニア
食道裂孔が開大し、胃噴門部が縦隔側に挙上している。軽度の食道裂孔ヘルニアである。
Step4
疾病の解説と所見のまとめを見た後、再度画像診断を検討してください
病名の解説
気管支拡張症
気管支拡張は軟骨を有する気管支の内腔が非可逆的に拡張する病態である。慢性的な湿性咳嗽を特徴とし、感染や血痰を繰り返し、時に喀血を生じる。慢性気管支炎や繰り返す誤嚥などの慢性炎症を併存したり、結核や珪肺症などでは炎症後遺による牽引性の拡張を合併する。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症も原因となる。また、気管支粘膜の繊毛の運動低下によって外的要因に対する防御機能が低下している状態でも起こりやすく、慢性副鼻腔炎との合併がよく知られている。
気管支拡張は形態上、円筒状(cylindrical)・静脈瘤様(varicose)・嚢状(cystic)の3型に分類されるが、多くの症例でこれらが混在している。
気管支拡張症のCT所見のまとめ
1.CTで気管支拡張を検出するには、thin-slice CTがもっとも鋭敏。
2.気管支の径が隣接する肺動脈の径よりも大きいこと、末梢側気管支の正常な先細り所見を欠くことから気管支拡張症と診断する。
3.円筒状拡張では壁肥厚が主体の場合、トラムラインが見られる。気管支内腔に分泌物が充満した場合(粘液栓)、分枝状の結節状陰影、棍棒状陰影として認められる。
4.気流制限による肺野濃度の低下(エアートラッピング)やモザイク状の肺野濃度を伴い、部分的な末梢性無気肺の合併が見られることも多い。
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