症例05

疾患名・解説
症 例
60歳代・女性 毎年秋になると咳、喀痰が持続する。

Step2

診断名を見て、再度画像診断を検討してください

診断:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
(Allergic Broncho Pulmonary Aspergillosis(ABPA))

下記ボタンを押すとDICOM画像(病院クオリティ画像)がご覧いただけます

Step3

CT所見、用語(解剖)解説と病変所見のあるキー画像

キー画像の右側の“>”をクリックすると画像上の重要所見に矢印マークが現れ、さらに“>”をクリックすると所見のコメントが現れます。Thin-slice画像や白黒反転での読影にも挑戦してください。


画像所見の解説

CT所見

気管支、肺野
1.右上肺葉S1と右下肺葉S8に樹枝状の拡張した気管支が見られ、区域枝と亜区域枝は拡張した気管支内に粘液栓塞(mucoid impaction)の充満によるFinger-in-glove signを認める。粘液栓塞は右B1で104HU、右B8で84HUと高濃度域(高吸収域)を呈している。末梢には小葉中心性の粒状分岐状影が見られる。
2.左上葉と右中葉には軽度の気管支拡張、壁肥厚と粘液栓(mucus-plug)も見られる。

用語解説【Finger-in-glove sign】

拡張した気管支に粘液が充満し、グローブ(手袋)をはめた手指のように見えること。この末梢の肺に含気があることが必要条件で、末梢肺が無気肺になっている場合にはこのサインは見られない。
このサインをきたす病態は、気管支の閉塞にともなう場合(気管支内腫瘍、先天性気管支閉鎖など)と、非閉塞性の場合(気管支喘息、ABPA、嚢胞線維症など)がある。 ABPAの場合は粘稠な粘液栓塞(mucoid impaction)であることが多く、粘液栓塞が高濃度域(高吸収域)を呈するのが特徴である。

...

キー画像 病変1:右上葉S1のmucoid-impaction

キー画像 病変1(追加):右上葉S1のmucoid-impactionは高濃度域(高吸収域)

キー画像 病変1(追加):右上葉S1のmucoid-impactionは高濃度域(高吸収域)

冠状断のほうがfinger-in-glove signを把握するのが容易


キー画像 病変2:右下葉S8のmucoid impactionも高濃度域(高吸収域)

キー画像 病変2(追加):右下葉S8のmucoid impactionも高濃度域(高吸収域)

Step4

疾病の解説と所見のまとめを見た後、再度画像診断を検討してください

病名の解説

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

アスペルギルス属のカビ抗原に対する過敏症によって引き起こされる病態。気管支喘息やアトピー体質、嚢胞線維症の患者で発症しやすい。
症状は、咳・痰、喘鳴が多く、血痰や喀血を伴うこともある。気管支炎・肺炎などを合併し発熱きたすこともある。
検査:血中IgE高値、好酸球の増多。


ABPAのCT所見のまとめ

1.中枢側(区域、亜区域)の気管支の拡張と内部の粘液栓塞(mucoid impaction):Finger-in-glove sign
2.粘液栓塞は縦隔条件画像で高濃度域(高吸収域)
3.付属所見:小葉中心性の粒状樹枝状影(末梢粘液栓)、エアートラッピング、無気肺、すりガラスないし浸潤影(好酸球性肺炎)

下記ボタンを押すとDICOM画像(病院クオリティ画像)がご覧いただけます

参照

1年後、再発時のCT

治療経過

抗生剤と抗真菌剤の投与にて症状とCT所見が軽快したため休薬。しかし、1年後の秋に、発熱を主訴に再来院し、ABPA再発と判明。
以下のキー画像は再発時に撮像したCT画像:初発時とは異なる部位(舌区)に再発病変が見られる。


キー画像 病変3:舌区の高濃度域(高吸収域)のmucoid impaction と無気肺・consolidation

キー画像 病変3(追加):舌区の高濃度域(高吸収域)のmucoid impaction と無気肺・consolidation


再発時のCT所見のまとめ

1.左肺舌区(病変3)に無気肺、consolidationが見られ、中枢側の舌区気管支は拡張し高濃度域(高吸収域)のmucoid impactionを伴っている。初発時とは異なる部位にABPAが再発増悪している。
2.右上葉(病変1)、右下葉の、気管支内に充満するfinger-in-gloveの樹枝状高濃度陰影および末梢のmucus-plugは改善し、高濃度域(高吸収域)のmucoid-impactionは消失している。

下記ボタンを押すとDICOM画像(病院クオリティ画像)がご覧いただけます