症例01

疾患名・解説
症 例
70歳代・男性 乾性咳嗽、労作時呼吸困難

Step3

その後解説を見て、再度画像診断を検討して下さい

診断:特発性肺線維症
(Idiopatic Pulmonary Fibrosis/Usual Interstitial Pneumonia (IPF/UIP))

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画像所見の解説

胸部X線写真

両側下肺野に微細網状影を認め、軽度容積減少を伴っている。

CT像

両側下肺野胸膜直下優位に非区域性かつ不均等に広がる網状影、線状影、すりガラス影、小のう胞を認める。下葉は容積減少を示している。小のう胞は胸膜直下1層ではあるが、集簇している部分(A)もあり、蜂巣肺と判定する向きもあろう。
1個の小葉に相当する1-2cm程度の領域に正常を含む4つ以上の所見が混在する像(B)は、本症に特有な空間的時間的多彩さに対応する。胸膜面の不整、気管支血管の不整な肥厚も見られる。

CT像
CT像

本症の解説

病理組織像

右肺S4、10より胸腔鏡下肺生検が施行され、usual interstitial pneumonia(UIP)に合致する所見が得られた。

病理組織像

全般

IPF/UIPは原因不明の間質性肺炎の中で最も頻度が高いものである。 病理学的には空間的、時間的多彩さ、小葉辺縁分布を特徴とするが、画像診断ではそれらは無視され、蜂巣肺のみが重視されてきた。
小葉辺縁分布は西村、伊藤らにより胸膜面の不整、小葉間隔壁及び気管支・血管の不整な肥厚像(1)に相当すると報告されている。空間的、時間的多彩さに相当する画像所見としては、
1. 1つの2次小葉に相当する1-2cmの領域に正常を含めた4つ以上の所見が混在すること、
2. 著明な左右差が見られることが挙げられている(2)。
尚2011年に上市されたATS-ERS-JRS-ALATのIPFガイドラインではCTで蜂巣肺が見られる場合には診断に外科的生検が不要であるとされた(3)。
しかしながら蜂巣肺の定義を単層ののう胞の集簇まで含めるかどうかや読影者間の診断の一致率の低さ(4)により、本症の診断をCT像上の蜂巣肺のみに頼るのは、尚慎重を要する。

参考文献:文献へのリンク付

2015-04-01
本症例は「症例画像データベース」に登録されました。