症例12
疾患名・解説
Step3
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診断:皮膚筋炎関連急性間質性肺炎
画像所見の解説
胸部X線写真
両肺尖部に胸膜肥厚様変化を認める。右横隔膜が挙上し、右下肺野中枢側に浸潤影を、末梢に索状影を認める。
CT像
右横隔膜が挙上しており右肺は全体的な容積減少を認める。 右肺上葉 S 3に気管支血管束周囲に分布する浸潤影を認める(A)。 陰影内部濃度の軽度低下(reversed halo
sign)や、軽度拡張した細気管支像を伴っており器質化肺炎をみているものと思われる。両肺全体、右側優位に気管支血管束周囲および胸膜下にランダムに分布する斑状のすりガラス影がみられる。
右下葉背側には板状無気肺と思われる索状影と周囲に浸潤影がみられている(B, C)。肺底部では肥厚した小葉間隔壁もみられる。
本症の解説
病理組織像(右S9、剖検)
胞隔のびまん性、浮腫性肥厚を認め、Ⅱ型肺胞上皮の腫大、過形成が認められる。肺胞腔にはマッソン体やフィブリンの析出もみられ、硝子膜形成(矢印)も認められる。びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)の増殖期・器質化期に相当する像が得られている。
全般
本症例はステロイドパルス、シクロホスファミド、シクロスポリン、免疫グロブリンと強力な治療を行ったが病勢コントロールが得られず、残念ながら死亡転帰となった症例である(A:治療介入2週間後、B:1カ月後)。
経過中、気胸、縦隔気腫、感染症なども合併した。後日の検査で抗MDA5/CADM140抗体陽性が判明した。
筋症状の乏しい皮膚筋炎、いわゆるClinically amyopathic dermatomyositis (CADM)に伴う急性経過の間質性肺疾患Interstitial Lung Disease(ILD)では重症例が多いことが知られている(1)。 Satoらは、CADM患者において高頻度に発現する抗MDA5/CADM140抗体を発見し、同抗体陽性例では急速進行性のILD合併頻度が有意に高いことを報告している(2)。 本症例は筋症状を伴っており、CADMの範疇ではなかったが、抗MDA5/CADM140抗体陽性で、極めて治療抵抗性であった。 抗MDA5/CADM140抗体陽性の皮膚筋炎に伴うILDのHRCTでは、下肺優位の浸潤影/すりガラス影が主体のケースと、ランダム分布のすりガラス影が主体のケースが多いとされる(3)。 本症例では両者の所見の混在が疑われた。
参考文献:文献へのリンク付
1.Suda T, et al.
Eur Respir J.2006;28:1005-1012
2.Sato S, et al. Arthritis Rheum.2005;52:1571-1576
3.Tanizawa K, et al. Respir Med.2011;105:1380-1387
2016-04-01
本症例は「症例画像データベース」に登録されました。